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20150621シャーマン太鼓づくり : 長い1日(前編)

猟師の朝は早い。

薄明るさと涼やかにさえずる鳥の声に
前日の深酒で乾ききった喉をヒリつかせ
重い身体を引き摺るようにゲルを後にしたのは、
小雨のパラつく夏至の午前5時であった。

男たちは寡黙に山を目指す。
朝飯前の一仕事、罠の見廻りだ。

長い1日が始まる…。


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“見る”という行為は多分に技術的なものである。
猟師の目に映る森、
私の目に映る森、
同じ森を見ながらも違う森を見ている。

一見、閑散とした静寂の人工林も

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騒がしいほどに獣たちの往来する
豊穣の森であった。


どこから来て、どこへ向かって行ったのか。
ここで何をした。
それはどれくらい前のことなのか。


初めての“猟師と共に歩く森体験”は非常にエキサイティング。
プロの解説を聞きながら見る森に見えない獣の姿がありありと目に浮かぶ。
様々な痕跡を頼りに獣の行動を読み取る猟師の目に、
四診を持って気の虚実を読む治療家の目と、
鳴りの悪さの原因を見抜く太鼓職人の目、
それぞれに通底するものを感じるのであった。

人が開花させ得る能力の幅のなんと広いことか。
と同時に
深まって初めて立ち現れる世界の在ること。
見る者しだいで世界はその姿を変える。





さて午前6時…

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「かかっとるぞ!」

この声を聴いた瞬間、まだ覚めきっていなかった頭は完全に覚醒!
抜け切っていなかったアルコールも瞬時に蒸散!

これから始まる一つの命の終わりに。
命が、肉に、皮に、変わる、
その始まりの終わりの立会いに。
昂まる期待と緊張。

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「おい、なんかぶん殴るもん持ってこい。」

ドカッ!
ドサッ!
ガバッ!
ドスッ! ヒィ〜 ン
バシャ!
ゴボゴボッ!
ゴボゴボッ…
ゴボッ…
……
ゴボッ…

ッ……



ぶん殴って叩き伏せ、
抑え込んで、頚動脈を狙って刺突。
素早く後肢を持ち上げ血抜き、
泡立って吹き出す血飛沫。

ぶん殴ってから絶命まで一分かそこら。


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プロの仕事の手早さあってのことながら、
かくも呆気なく
流れ出る血と共に命は流れ肉塊と化す。



人もまたかくの如しか…



…と、感傷に浸る時間は無い。
かつて命を育んだ体温は、命が流れ出た瞬間から刻一刻と肉の腐敗を促す。
山の天然冷蔵庫、“沢”へ急ぐのだ!

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林道に出て軽トラに積み込み、急ぎ“沢”へ放り込んだ午前6時半。

さてどうするべ?

猟師頭はこのあと丸1日イベント出店、
チョッキーさんと俺は10時からWS開始、
WS終了後はもう日も落ちて沢には入れない…

いつやるの?

今でしょ!


ということで、
沢で冷やしながらの緊急解体開始。


まず腹を割り心臓を取り出し山の神に感謝の意を捧げる。
反芻動物である鹿の胃は4つくらい?
想像以上に大きく中は見事に草草草。
鹿肉独特匂いはまさにこの草の香りだ。

内臓を外してみれば幾本かの肋骨に骨折あり、
また括り罠が掛かっていた方の前肢の肉はズタズタに血が回り
ほとんど食べられない状態。
必死で生きようと足掻いた形跡だ。

野性動物は夜半から早朝にかけて活発に行動し、
罠に掛かるのもその時間帯。
掛かれば大人しく死を待つ訳も無く
暴れに暴れ自傷する。
故に罠に掛かってから発見までが早ければ早いほど
肉質は良い。
遅ければ遅いほど、全身ズタズタのボロボロ。
それこそただのゴミ。
無用な殺生と言うわけ。

猟師の朝が早いのはその故だそうだ。
自然の恵みを受けるには、自然のリズムに沿って生きることが肝要と。
この季節、胡瓜は毎日取らなきゃならんのと同じことですな。



さてさて、
雨に濡れ、ブヨと格闘しながら全て解体し終えた午前8時。
一仕事終えた心地良い疲労感。

…だが余韻に浸る余裕は無い。
いざ、一山こえて富士山環境交流プラザへ赴かん!

『シャーマン太鼓作りWS』
これが本日のメーンイベントなのだから。




後編に続く…




















by kei-grande | 2015-07-01 20:34 | Projeto 企画